Netflixの注目ドラマ『地面師たち』
このドラマは、かつて積水ハウス社が地面師に70億を騙し取られた事件を元ネタに、Netflixオリジナルドラマとして制作されたものである。
第一話では、マイクホームズ株式会社と呼ばれるベンチャー不動産企業が将来の利益のため、マンション用の土地を10億で購入する決断をした。
ところが、購入したその土地は地面師たちが巧妙に作り上げた、いわゆる「なりすまし詐欺」であった。
なぜ、マイクホームズ社は地面師たちに騙し取られてしまったのか。
不動産詐欺の流れ
『地面師たち』の第一話では、マイクホームズ社が10億を騙される話になるが、物語の流れを追うと、不動産詐欺の簡単な流れがわかる。
- 所有者が不在(死亡など)、又は生きてはいるが病気など施設療養でその土地に住んでいないなど、人間が介入しにくい土地を見つける<情報屋の仕事>
- その土地の所有者に成りすます人物を見つけ、訓練する<手配師の仕事>
- 偽造書類(証明書含む)を作成する<ニンベン師の仕事>
- 法律に触れないように相手を交渉の場に出させ、法律すれすれの誘導を行う<法律屋の仕事>
- 最後の交渉に臨む<交渉役の仕事>
- 1~5の仕事役を見つけ、すべての計画の舵を取り成功へ導く<リーダーの仕事>
以上の5つの流れで詐欺が行われた。
流れを追うと、非常に緻密かつ完璧な計画が必要であることがわかる。
こんなことをしてまで何億というお金を手にしたいと思うのだろうか。
リーダーの仕事はいかにもかっこよくも見える。
頭にいい人にしかできないだろう。
ドラマの中では免許証チップの確認、本人確認のための際どい質問などが展開され、「え、それ答えられんの?」というハラハラドキドキの展開であった。
マイクホームズ社の社長:真木 悠輔の焦燥、浮かれ
では、なぜマイクホームズ社は騙されたのか。
まず第一にマイクホームズ社の社長である真木 悠輔の焦りが挙げられる。
真木は会社を大きくしたい気持ちが強く、気性が荒く、いかにも自分が引っ張っていくリーダー像であった。
見栄っ張りで自分の裁量で物事を進められることに強みを持っていた。
そんな性格が災いしたのか、「法律屋:後藤 義雄(演:ピエール瀧)」の口車にまんまと乗せられた。
「こんないい土地二度とありませんよ」という感じを出しつつ、「地主さんにはすぐ会えますよ」と期待を持たせる。
だが実際に地主には会わせない。いや、会わすことができない。(だって本物はいないんだから・・・)
その代わりに物件を内覧させて不動産企業を安心させる。
しかし真木も、いうてもここまで会社を成長させてきた社長である。そう簡単には騙されない。
「家の中を確認さえてください」
「必ず地主さんには会わせてください」と力強く念押しした。
それでも後藤(法律屋)の弁に交わされた。
さらには不倫がマスコミにばれ、すべてに浮かれていた。金も女も手に入れたような気分に浸っていたかった。
地面師たちの用意周到かつ完璧な準備
地面師たちは自分たちの目的を果たすためには、すべてをかける。
すべては自分たちの快楽のため、スリルのため、金のため、シャブのためだ。
計画には非常に慎重かつ大胆だ。
第一話では多少小物の土地を取り扱う。(いうても10億だが・・・)
それでも、なりすまし役にはリアル感を求める。多少顔は似てなくとも、それっぽい人物を選ぶ。
これはリーダーであるハリソン 山中(演:豊川悦司)が決断をする。
「必要なのはリアル感だ」
そうハリソン山中はつぶやく。
なりすまし役に選ばれたおじいさんは、社会的に何かしらの負い目を追っている。
それゆえ、楽してお金が手に入るならば協力は惜しまないのだろうか。
あまり頭が良くないのか、物覚えは良くない人物設定だった。
もちろん偽造書類も完璧である。印鑑証明書も完璧である。
第一話の場面では印鑑証明書の印鑑を、交渉の確認することができなかった。
質問、という非常にアナログな方法で本人確認を行うから、2020年代では考えられないだろう。
過去のさまざま事件を経て、われわれは気づき、新しい技術や仕組みを考え出してきたのだろうが。
騙される前に気づくことはできないのだろうか。
何かが起きる前に気づくことはできないのだろうか。
そして、物語はマイクホームズ社での売買契約交渉に進む。
「小物は小物らしく、悪あがきをしてくる」そう読んでいたハリソン山中は、交渉役の辻本 拓海(演:綾野剛)に何かを渡していた。
それは小型無線イヤホンだ。
マイクホームズ社側の司法書士による奥の手的な質問の際、アドリブを利かせた演技でイヤホンを装着。
ハリソン山中の指示で、なんとか最後の質問に答えることができた。
すべてのピースは欠けてはいけない
地面師たちの仕事ぶり(仕事と呼んでいいのかわからないが)を見ると、すべてのピースは完ぺきにやり遂げなければならないと思える。
こういった視点で観ると、この映画の面白さは悪魔じみている。
人間は騙し、騙されるものがどうしてこうも好きなのか、そう感じた。
なぜ、私はこのドラマを見て”おもしろい”と感じているのか。
それも犯罪者側の立場で。
人間は残酷だから。
この一言で済まされることなのか。
・・・わからない。
だがしかし、地面師たちの仕事は、どのピースが欠けても成立しないのだ。
マイクホームズが騙された原因
マイクホームズ社が騙された原因は、ドラマ的に考察すると以下のようにまとめることができる。
- 地面師たちの計画が完ぺきだった。
- 計画だけでなく実行(交渉とそれまでの準備)も抜かりがなかった。
- マイクホームズ社は焦りすぎた。勝ちを急ぎすぎた。
- 後藤の言葉に踊らされ、本人確認を行うことに躍起になってしまった。
- これまでの違和感(地主になかなか会えない、話がうますぎる)に気づけなかった。気づこうともしなかった。
このようなところではないだろうか。
騙そうとする側は、何か大きな目標、自分が到底叶わないと思うような相手を倒すことに快感を覚える。
普通の人は決してやろうと思わないことも、頭のいい自分、欲望を満たしたい自分に素直に正当化をする。
騙される側は、いつだって心浮かれた人間だ。
心浮かれると人間は正しい判断ができなくなる。
だから、違和感に気づけない。
では・・・、浮かれていなかったら防げたのか?
いや、どうだろう・・・。
第一話のケースを見ると、マイクホームズ社は適切なプロセスを踏んでいるようにも見える。
気づけと言われてもなかなか難しいのではないだろうか。
人間がなかなか気づけない部分は、現代ではテクノロジーが補っているのか。
ただ、これもイタチごっこなのかもしれない。
ぜひ興味の湧いた方は、Netflixで視聴してみてはいかがだろうか。
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